ミッションベアリングが破損しているので、エンジンを下ろして修理します。
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下ろしやすいよう、ヘッドカバーはスリムなヨーロッパ仕様に変更しておきます。
先ずは下からジャッキで持ち上げ、
オイルフィルターボルトの頭をフレームの外側へ出します。
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フレームの右側ダウンチューブを軸にエンジンを右に傾けると、
エンジンがフレームから抜けてきます。
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そのままゴロンと右側に倒せば、エンジンが下せます。
全て一人作業でOKです。
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エンジンが下りました。
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ミッションベアリングの交換のみなので、
裏返してロアクランクケースだけ分解します。
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オイルパンを外します。だいぶスラッジが堆積しています。
特に大きな異物は見当たりません。
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オレンジの粉は、マグネットを止めている接着剤が剥離したものです。
Mk2系エンジンではよくあることです。
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左右のカバー類を外します。
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ロアクランクケースを分離します。
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アウトプットのボールベアリングは、アウターレースが縦に割れています。
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アウトプット側のミッションを取り出します。
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ボールベアリングのアウターレースは、
ポジションリングの溝に沿って割れています。
2:1位の割れ方をしているので、かろうじてシャフトは支えられていたようです。
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取り外すとこんな感じです。
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幸い、ケース側にはほとんどダメージはありませんでした。
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ミッションのギヤなどにも特に異常は無いようなので、
破損したベアリングの交換のみで修復できそうです。
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スプロケットが固定されていなかったので、
衝撃荷重でスプラインは摩耗しています。
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摩耗痕は現在付いていたスプロケの歯幅より狭いので、
過去に別のスプロケで摩耗した痕のようです。
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インプット側も分解して点検します。
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過去の交換履歴が不明のため、ベアリングは全て新品交換します。
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ベアリングを交換したら、クラッチハブを規定トルクで締め付けます。
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インプット側のこのレースだけは生産終了なので継続使用します。
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内部にOリングがあるので、それだけ新品交換します。
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この穴はクラッチプッシュロッドが通る穴で、
ベアリングレースから軸心にオイルが供給され、
インプット側の各ギヤにオイルを供給する通路でもあるので、
このOリングは重要です。
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アウトプットシャフトを組み立てます。
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ミッションをケースにセットします。
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クランクケースを合体します。
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オイルポンプを取り付けます。
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オイルパンは洗浄して取り付けます。
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オイルフィルターのバネのところにあるはずのワッシャーが、
欠品していたので追加します。これはよく知らずに無くすことが多いので要注意。
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オイルパンまで組み立て終了。
オイルパンのボルトは短かったので、純正の長さの物に交換しました。
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エンジンを車載します。
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車載完了。
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軸のガタは無くなりました。これが正常な状態です。
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破損したベアリングを分解してみます。
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ボールのケージを取り外します。
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ボールを外して分解します。
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内輪の転動面は広範囲に剥離しています。
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反対側はこんな感じ。
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外輪は一見キレイに見えますが、拡大してよく見ると表面はかなり荒れています。
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ボールも拡大してみると、細かい異物を噛んで凹みだらけです。
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今回の破損の原因を推測してみましょう。
ベアリングメーカーのカタログに事例が載っています。
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写真入りで、いろいろな破損例が載っています。
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今回の事例は、こちらのフレーキングのようです。
過荷重によるものが主な原因です。
過去に、チェーンの張り過ぎなどがあったと考えられます。
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ちなみに、このベアリングのスペックはこんな感じ。
静的耐荷重は15500N(ニュートン)、動的耐荷重は21500Nです。
ベアリングが壊れたということは、これ以上の力がかかったということになります。
チェーンの張り過ぎには注意しましょう。